らほつのなかみ

暇を持て余したおじさんのたわごと。

『夫のちんぽが入らない』『ここは、おしまいの地』を読んで

 最初はTwitterで回ってきた(もしくは広告で表示された)『夫のちんぽが入らない』の序文を見たのがきっかけだった。同人誌に掲載されているバージョンだったのでたしか見開きのものだったと思うのだが、それを読んですぐ「これは買いだ」と即決した。

 

 実を言うと私も入らない側の人間である。入れれない側というべきか。

 

 こだまさんのように全然入らないというほどではなく、苦痛を伴ってなんとかという程度ではあるが、当時はそのことに相当悩んでいて、そんなときに序文を読んで少なからず救われた。そんな読者の一人である。

 

 

 ただ、この本を買おうと決意したのはテーマに同調したというのもあるが、それよりもこだまさんの低いテンションなのにあれだけの面白い文章が書ける才能に惹かれたというのが一番の理由だ。

 

 こだまさんの文体は基本的に暗い。そしてずっと(世間一般的には)不幸な話のオンパレードである。

 そもそもこの『夫のちんぽが入らない』も鬱々とした閉鎖的な田舎で思春期を過ごし、教師になってからは学級崩壊にあい精神的に病んでしまったり、夫がパニック症候群になったり、とにかく不幸なエピソードが続く。

 それでもこだまさんが書くと面白いのだ。どこか客観的に見ているというか、他人事でこの不幸を面白おかしく見ているというか。

 それでいて他の人を攻撃するわけでもない。淡々と、不幸を面白おかしく見ている。

 

 そして、キャッチーなタイトルもあって『夫のちんぽが入らない』のほうが注目されるが、こだまさんの文章の妙を味わえるのは『ここは、おしまいの地』のほうだと断言する。

 こちらはエッセイ集で、これもまた、ずっと不幸だ。

 

 個人的に好きなのは「私の守り神」という話。

 まず冒頭、医者に「今のあなたは転んだだけで死にます」と告げられるところから始まる。出落ちだ。

 そこから入院先での生活や出会った人々についての話につながっていき、「おすそ」を洗われる。詳しくは読んでみてほしい。ここぞというときの緩急のつけかたが素晴らしい。

 

 映像化や漫画化もされて話題になっている本でもあるので、話のネタついでに『夫のちんぽが入らない』から入ってみて、気に入ったら『ここは、おしまいの地』を読んでみたら良いのではないかなと。

 いや、ぜひ両方読んでほしい。

 

夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

 

 

 

ここは、おしまいの地

ここは、おしまいの地

 

 

漫画版もあります。 

夫のちんぽが入らない(1) (ヤンマガKCスペシャル)

夫のちんぽが入らない(1) (ヤンマガKCスペシャル)